時代は「一億総活躍社会」です。
本人が望むなら、65歳、70歳と、老人になっても長く働くことができる時代が来ています。
その一方で、若い時から資産形成しながら、より早い退職を目指す「FIRE(経済的自立・早期リタイア)」という考え方が、話題になっています。
雑誌の記事、書籍などでも、「FIRE」という言葉がよく取り上げられるようになりました。
この記事をご覧になっている方も、きっと「FIRE」に興味がある方だと思います。
筆者も、「FIRE」という言葉が流行り始める前から、早期退職を目指して資産形成を目指しており、達成目前という段階まで来ました。
「FIREのアーリーアダプター」を自負しています。
この記事では、筆者が長年目指してきた「FIRE」が意味する「経済的自立」や、「FIRE」を実現するための資産形成の考え方について、初心者にもわかりやすいよう、丁寧に解説します。
FIRE(経済的自由と早期リタイア)とは?

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「FIRE」とは、英語の「Financial Independence, Retire Early」の頭文字です。
日本語では「経済的自由と早期リタイア」という意味です。
金融資産からの収益で生活費を賄えるだけの資産を形成し、定年を待たずに仕事を辞めて、自由な人生を勝ち取ることです。
FIREは、会社・仕事にとらわれずに自由に生活したい人が目指す生き方なのです。
一昔前は、「早期リタイア」というと、億万長者になって会社を辞めるイメージがありました。
しかし、近年流行しているFIREは、必ずしも億万長者になる必要はありません。「経済的に独立した状態で」リタイアすることを指します。
経済的に独立した状態とは、会社などに依存しなくても生活が成立するということです。
節約して低コストで生活することができるなら、億万長者とまでは言えない資産でもFIREすることができるのです。
資産が多くなくても、不労所得を受け取れる仕組み、例えば不動産投資や小規模な事業などを用意しておけば、毎日仕事に出かけなくても生活をしていくことができます。
会社などの組織に束縛されることなく、自分らしく自由に生きることが「FIRE」なのです。
従来の早期リタイアと「FIRE」との違い

新型コロナウイルスの流行に伴い、リモートワークが普及し、働く場所や時間など勤務形態の多様化が進んできました。
今までと違った働き方の選択肢が増えたことで、会社員としての人生を見直す方も多いのではないでしょうか。筆者もその一人です。
筆者の場合は、コロナウイルスの流行期に離婚も経験し、シングルファーザーとして生きていくことになりました。
仕事よりも家庭の方が圧倒的に優先順位が高くなったと同時に、子供と少しでも長い時間を一緒に過ごし、成長を見逃したくないという気持ちが強くなったのです。
そこで、自分の人生を見直すヒントとなったのが、流行している「FIRE」というムーブベントです。
20代の時から節約し、コツコツと投資を行っていたことも幸いしました。
億万長者というわけでは全くないのですが、それでも会社を辞めて子供と一緒に過ごす方が、自分にとっても子供にとっても幸せな人生だと気づくことができたのです。
FIREに向けた事前準備

FIREのためには、家賃収入や配当金など、生活が成り立つだけの不労所得が必要です。
不労所得なしで、いきなり会社や事業を辞めてFIREすることはおすすめできません。
FIREは簡単ではありません。入念な準備が必要なのです。
FIREに向けた事前準備として、以下の3点が必要です。
● 生活費25年分の資産
● 少ない生活費で生活する習慣
● 周囲の価値観左右されない信念
「FIRE」を実現するための4%ルール

FIREを実現するためには、FIRE後に資産が枯渇しないことが必要です。
資産を枯渇させないための考え方の一つに「4%ルール」というものがあります。
4%ルールは「生活費を投資元本の4%以内に抑えられれば、資産が目減りすることなく暮らしていける」というルールで、アメリカの論文で提唱された考え方です。
これを言い換えると、FIREするために必要な資産は「投資元本(100%)÷年間支出(4%)」です。すなわち、年間支出の25倍の資産を用意し、年利4%で運用を続ければ、資産を減らすことなくFIREが可能ということです。
たとえば、年間支出が250万円だとすれば、FIREに必要な資産は250万円×25倍=6,250万円です。
この6,250万円を、一切運用せずに取り崩してしまうと、25年で資産は枯渇します。
しかし、6,250万円を運用に回し、年4%の不労所得を得ることができれば、6,250万円×4%=250万円ですから、年間支出の250万円をそのまま得ることができるのです。
こうして、投資元本を減らすことなく生活できます。
ただし、この「4%」という数値はあくまで米国の株式市場のこれまでの成長実績を元にしたデータです。今後も4%で成長する保証があるわけではありません。
また、投資の利回りは、毎年安定することはありません。
年によってはマイナスになることも当然ありえます。
その場合は、値下がりした資産を生活のために取り崩す必要が出てきます。
そういったことも、予め覚悟しておく必要があります。
なお、総務省による家計調査の消費支出(総世帯・2019年平均)によると、1世帯あたりの平均支出は月額24万9,704円で、年間では299万6,448円となっています。
つまり、平均的な世帯のFIREの目安は、300万×25年=約7,500万円という金額となります。
「高すぎて無理」と感じる方も多いと思います。
筆者も、普通に生活して資産運用していたら、7,500万円も貯金することはできなかったと思います。
この高いハードルを越える方法は、いくつかあります。
筆者の場合は、資産形成期にはハイリスクハイリターンな運用を行い、FIRE後はローリスクな運用に切り替えるという戦略で資産形成を行いました。FIRE実現に向けた戦略については、別の記事で詳しく解説します。
他にも、「FIRE後もある程度は労働収入を得る」「地方に引っ越すなどして、生活コストを大きく下げる」といった方法により、FIRE実現に向けたハードルを下げることも可能です。
「一生働かない」ことに固執する必要はない
FIREは、「働かない」ということが目的ではありません。あくまでも自分らしい自由な人生を送ることが目的です。
そのため、自分の好きな副業をしながら収入を得る「サイドFIRE」や、気の合う仲間がいる職場に週1〜2日だけ短時間働きに行ったりする「バリスタFIRE」など、色々なタイプのFIREが提唱されています。
FIREに必要なのは「投資」「節約」「副業」

FIREに向けて必要なのは、「投資」「節約」「副業」です。
目標額達成に向けて、住居費や食費、遊興費などの節約は大切です。
ただし、「支出を切り詰めるより収入を増やす方が影響力は大きい」と言われており、過度な倹約よりも、早い時期からできるだけ多くのお金を投資に回すこと・副業などで入金力を高めることの方が重要です。
特に投資については、長期間続けることが重要です。
少しでも若いうちから、投資を始めることが大切です。
数多くのFIRE実践者たちは、早期リタイアのために副業などで収入を最大化するだけでなく、資産運用することで不労所得を増やすことにも取り組んでいることが共通しています。
例えば、毎月3万円の積み立てでも、年利7パーセントで15年間運用することができれば、単純計算で15年後には約950万円、20年後には約1,560万円ほどに資産が膨らむのです。
もちろん、投資の利回りは安定しません。
運用利率が低い年や、マイナスになる年もあります。
しかし、目標を達成するまでは焦る必要はありません。
地道に積み立てを続けることが重要です。
まずは「つみたて投資」でコツコツと

FIREするための必要資産を資産を用意するときに、ぜひ活用したいのが「複利効果」です。
複利効果は、運用益を積立金に組み入れることで、その利益が次の利益を生み出し、雪だるま式に増えていく効果のことです。
かのアインシュタインも、「福利は人類最大の発明」と呼んだといわれます。
お金を増やすうえで、欠かせない大切な効果です。
「ドルコスト平均法」により、資産の平均取得金額を下げることも重要です。
FIREのためには、毎月コツコツ投資に回すことは必要不可欠だと思います。
まずはFIREの「FI」(経済的自立)を目指そう!

FIREを目指すか否かは、個人の人生観によるところが大きいです。
会社の仕事が楽しく、毎日が充実しているのであれば、無理にFIREを目指す必要はないでしょう。
しかし、そのような人にとっても、「FI」(経済的自立)を目指す価値はあると思います。
会社が倒産するなどの不足な事態が起こったとしても、会社に依存せずに生活していける経済力があれば、気持ちと生活に余裕ができます。
筆者も、「妻が不倫し、離婚により突然シングルファーザーになる」という不測の事態に襲われました。
突然、ひとりで幼児を育てることになってしまいました。
それを救ってくれたのが、若いころからの投資と副業だったのです。
後から振り返ると、若い時から投資や副業により資産形成していたことが、自分と子供の人生を大きく好転させたと強く実感しています。
この記事を読んでくださっている方にも、FIREに向けた資産形成が人生を前向きに変えてくれることを、ぜひ知って欲しいと願っています。